紛争解決手続代理業務試験は、研修を修了した社会保険労務士について紛争解決手続代理業務に必要な学識及び実務能力を判定する試験です。第22回は令和8年11月21日に実施され、受験手数料は15,000円、申込は令和8年9月14日から10月2日までです。合格後は名簿の付記で特定社労士となり、あっせん・調停・民間ADRの当事者代理を担えます。
試験が判定する学識と実務能力
本試験は、社会保険労務士法第13条の3に基づき厚生労働大臣が毎年一回以上実施し、研修を修了した社会保険労務士について、紛争解決手続代理業務に必要な学識及び実務能力を判定します。第22回は令和8年11月21日(土)に実施されます。
社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)第13条の3は、紛争解決手続代理業務を行うのに必要な学識及び実務能力を有するかどうかを判定するため、厚生労働大臣が毎年一回以上試験を行うと定めます。試験事務は全国社会保険労務士会連合会(連合会)が行うことができ、第22回の申込窓口も連合会の試験センターです。
第22回の試験科目は、個別労働関係紛争に関する具体的事例について、専門的解決能力及び実践的知識を問うものです。設問の一部には、社会保険労務士の権限と倫理に関する問題が含まれます。つまり論点の暗記ではなく、事例を読んで手続と対応を組み立てる力が問われる試験です。
学習の出発点は、代理業務そのものの輪郭を正確に知ることです。次の節で受験資格と学習範囲を確認し、その後で代理業務の対象手続を整理します。
出典: 厚生労働省|第22回紛争解決手続代理業務試験の実施について — 実施要項(令和8年9月11日公示); 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号) — 第2条、第13条の3、第14条の11の2、第20条、第22条、第25条の9
受験資格は研修修了、申込時は修了見込み証明も可能
受験資格は所定の研修を修了した社会保険労務士であることです。申込時点で未修了でも、試験日までに修了する見込みを証する書面を研修修了証の代わりに提出できます。
受験資格は、社会保険労務士法第13条の3第1項に規定する研修の修了者です。研修は連合会が講義及び演習により行い、総時間数は63時間以上と定められています。研修を修了すると研修修了証が交付されます。
試験の日までに研修を修了する見込みである場合は、研修修了証に代えて、見込みを証する書面を添えて申込できます。研修は社会保険労務士であることが前提の制度なので、まず社労士資格と登録が先決です。
- 個別労働関係紛争に関する法令及び実務
- 個別労働関係紛争の解決のための手続
- 個別労働関係紛争における書面の作成
- 紛争解決手続代理業務に携わる者としての倫理
- その他個別労働関係紛争に関し必要な事項
出典: 厚生労働省|第22回紛争解決手続代理業務試験の実施について — 実施要項(令和8年9月11日公示); 社会保険労務士法施行規則(昭和43年厚生省・労働省令第1号) — 第9条の3〜第9条の7、第12条の5、第16条の3; 紛争解決手続代理業務|社労士とは|全国社会保険労務士会連合会 — ADRと特定社労士・社労士会労働紛争解決センター
第22回の実施要項
試験日は令和8年11月21日(土)。試験地は全国7都道府県で、受験手数料は15,000円です。申込は令和8年9月14日から10月2日まで、簡易書留の消印有効で連合会試験センターへ送付します。
申込書には、研修修了証(または修了見込みの証明書)と写真を添えます。手数料15,000円は、連合会が指定する郵便振替の口座に払い込みます。申込書の送付は簡易書留郵便で、令和8年10月2日までの消印があるものに限り受け付けられます。
受験票は受付期間の経過後、試験センターから申込者に直接送付されます。合格者は令和9年3月12日(金)の官報に受験番号で公告され、本人に合格証書が送付されます。
身体の障害等で特別な配慮が必要な場合は、申込みと併せて特別の措置の申請を行うと、障害の状況に応じた措置を受けられます。試験時間など実施の詳細は、試験センターが作成する受験案内に記載されています。実施要項の最新の内容は厚生労働省の公示と受験案内で必ず確認してください。
演習
第22回試験へ申し込む社会保険労務士Aは、研修を令和8年11月15日に修了予定です。Aは10月2日に普通郵便で申込書を送り、修了見込み証明書は同封しましたが、写真を入れ忘れました。公示と施行規則に照らし、修了見込み、送付方法、写真の三点を判定してください。
解答を表示
修了見込み証明書は、試験日までに研修を修了する見込みであることを証するため申込時の代替書類として使えます。一方、送付は普通郵便ではなく簡易書留郵便に直し、10月2日までの消印を確保する必要があります。写真も必須の添付書類なので追加が必要です。
第22回公示は、申込受付を令和8年9月14日から10月2日までとし、簡易書留で送付して10月2日までの消印があるものだけを受け付けると定めています。施行規則第9条の5は、試験日までの研修修了見込みを証する書面を研修修了証の代わりに添付できるとし、写真の添付も求めています。したがって、Aの修了予定日は試験日11月21日より前なので見込み証明の点は満たしますが、郵便種別と写真を是正しなければなりません。
| 項目 | 第22回の内容 |
|---|---|
| 試験日 | 令和8年11月21日(土) |
| 試験地 | 北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県 |
| 受験資格 | 所定研修の修了者(申込時は試験日までの修了見込み証明でも提出可) |
| 受験手数料 | 15,000円(連合会指定の郵便振替口座へ払い込み) |
| 申込受付 | 令和8年9月14日(月)〜10月2日(金)、簡易書留(同日消印有効) |
| 申込先 | 全国社会保険労務士会連合会 試験センター |
| 合格発表 | 令和9年3月12日(金)官報公告、本人へ合格証書送付 |
代理業務の対象:あっせん・調停・民間ADRの三類型
合格して名簿の付記を受けた特定社労士だけが担える業務は、都道府県労働局・労働委員会のあっせん、六つの法律に基づく調停、指定団体の民間紛争解決手続の三類型です。相談、和解交渉、和解契約締結も業務に含まれます。
社会保険労務士法第2条第3項は、紛争解決手続代理業務を、試験に合格し付記を受けた特定社労士に限って行える業務と定めます。付記とは、社会保険労務士名簿に試験合格の旨を記載する手続です。合格だけでは業務を開始できず、付記申請まで完了して初めて特定社労士になります。
対象となる手続は三類型に整理できます。第一に、都道府県労働局の紛争調整委員会におけるあっせんの手続と、障害者雇用促進法、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、労働者派遣法、育児・介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法に基づく各調停の手続です。第二に、都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争のあっせんの手続です。第三に、厚生労働大臣の指定団体が行う民間紛争解決手続(ADR)です。
民間ADRには価額の条件があります。紛争の目的の価額が120万円を超える場合は、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限られます。つまり120万円以下なら単独で代理でき、それを超えると弁護士との併任が前提になります。
さらに法第2条第3項は、手続そのものに付随する事務として、手続についての相談、手続開始から終了までの和解交渉、成立した和解における合意内容の契約締結を含めます。一方、他の法律で行為が制限されている事務や、療養の給付等の費用に係る請求事務は含まれません。学習では「何ができるか」と「何が含まれないか」の両面で範囲を押さえてください。
| 類型 | 手続 | 条件・備考 |
|---|---|---|
| あっせん(労働局) | 都道府県労働局の紛争調整委員会におけるあっせんの手続 | 個別労働関係紛争が対象 |
| 調停(労働局) | 障害者雇用促進法・労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法・労働者派遣法・育児・介護休業法・パートタイム・有期雇用労働法に基づく調停の手続 | 都道府県労働局で実施されるもの |
| あっせん(労働委員会) | 都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争のあっせん | 一部の紛争を除く |
| 民間ADR | 厚生労働大臣が指定する団体が行う民間紛争解決手続 | 価額120万円超は弁護士が同一依頼者から受任している場合に限る |
出典: 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号) — 第2条、第13条の3、第14条の11の2、第20条、第22条、第25条の9; 厚生労働省|第21回(令和7年度)紛争解決手続代理業務試験の合格者について — 試験結果・合格基準・参考2; 紛争解決手続代理業務|社労士とは|全国社会保険労務士会連合会 — ADRと特定社労士・社労士会労働紛争解決センター
権限と倫理:設問に含まれる論点
試験には権限と倫理の問題が含まれます。法が定める業務の限界、利益衝突の禁止、依頼受任義務の適用外である点、書面表示の義務が制度の骨格です。
まず権限の限界です。紛争解決手続代理業務は特定社労士だけが行え、その内容も法第2条に列挙された手続と付随事務に限られます。他の法律で制限されている事務は含まれないため、公示されている三類型(あっせん・調停・民間ADR)の外に出る業務は担えません。
次に利益衝突です。法第22条第2項は、紛争解決手続代理業務について、相手方の協議を受けて賛助し又は依頼を承諾した事件、信頼関係に基づくと認められる協議を受けた事件、受任している事件の相手方からの依頼による他の事件を禁止します。第三号(相手方からの依頼)だけは、受任事件の依頼者が同意した場合に例外的に可能です。事例問題では「誰の相手方か」「同意があるか」を確認する習慣が役立ちます。
意外に見落とされる点として、法第20条の依頼受任義務は紛争解決手続代理業務には適用されません。開業社労士の正当な理由のない依頼拒否の禁止から、紛争解決手続代理業務に関する依頼は除外されています。
実務手続の側面では、事務代理等の権限を示す扱いが省令で定められています。あっせん等に関して行政機関等へ書類を提出する際は、本人の氏名等を記載した書類に「紛争解決手続代理者」と表示し、社労士の名称を冠した氏名を記載します。行政機関等から指導等があった場合には、その内容を本人に通知する義務もあります。法人で紛争解決手続代理業務を担う場合は、特定社員が常駐していない事務所では業務を取り扱えないなど、法人特有の制限も定められています。
出典: 厚生労働省|第22回紛争解決手続代理業務試験の実施について — 実施要項(令和8年9月11日公示); 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号) — 第2条、第13条の3、第14条の11の2、第20条、第22条、第25条の9; 社会保険労務士法施行規則(昭和43年厚生省・労働省令第1号) — 第9条の3〜第9条の7、第12条の5、第16条の3
第21回の結果と合格基準(参考データ)
直近の第21回(令和7年度)は、受験者1,041人、合格者526人、合格率50.5%でした。合格基準は100点満点中55点以上、かつ第2問10点以上で、第1問70点・第2問30点の配点でした。
厚生労働省は第21回(令和7年度)の結果として、令和7年11月22日の試験で受験者1,041人、合格者526人、合格率50.5%を公表しています。これは過去の実績値であり、第22回の合格率を予測するものではありません。
第21回の合格基準は、100点満点中55点以上かつ第2問10点以上で、第1問70点満点、第2問30点満点の配点でした。試験問題及び出題の趣旨は連合会のホームページに掲載されています。第22回の合格基準は、この記事の作成時点では確認できていません。参考値として扱い、最新情報は厚生労働省及び連合会の公示で確認してください。
演習:代理の可否を手続別に判定する
アは引き受けられます。イは単独では引き受けられません(弁護士が同一の依頼者から受任していれば可能)。ウは紛争解決手続代理業務として引き受けられません。
手続別の判定練習は、無料練習問題ページでも行えます。まずは下の演習で、自分の言葉で根拠を述べられるか確認してください。
演習
あなたは、紛争解決手続代理業務の付記を受けた特定社会保険労務士とします(この前提は演習のための設定です)。依頼者は元従業員で、未払い残業代150万円を巡る個別労働関係紛争を抱えており、弁護士には依頼していません。次の三つの依頼のうち、紛争解決手続代理業務として引き受けられるものを、根拠とともに判定してください。ア 都道府県労働局の紛争調整委員会に対するあっせんの申立て手続の代理。イ 厚生労働大臣が指定する団体が行う民間紛争解決手続における単独での当事者代理。ウ 労働審判手続における代理。
解答を表示
アは引き受けられます。イは単独では引き受けられません(弁護士が同一の依頼者から受任していれば可能)。ウは紛争解決手続代理業務として引き受けられません。
アのあっせんの手続代理は、法第2条第1項第1号の四が定める対象であり、価額による上限の定めはありません。150万円の事案でも、紛争調整委員会のあっせんであれば代理できます。イの民間ADRは、法第2条第1項第1号の六により、紛争の目的の価額が120万円を超える場合は弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限られるため、150万円で弁護士未依頼の本案では単独代理はできません。依頼者に弁護士依頼を併せてもらうか、価額の範囲内で手続を選び直す対応が現実的です。ウの労働審判は、公示されている代理業務の対象(あっせん、六法律の調停、民間ADR)に含まれないため、特定社労士であっても紛争解決手続代理業務としては担えません。誤りやすいのは、「ADRの代理ができるなら裁判所の手続も同じだろう」と広げて解釈することです。代理業務は法文に列挙された手続に限られ、他の法律で制限されている事務は法第2条第4項により含まれない、という範囲の読み方が本試験の土台です。
出典: 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号) — 第2条、第13条の3、第14条の11の2、第20条、第22条、第25条の9; 厚生労働省|第21回(令和7年度)紛争解決手続代理業務試験の合格者について — 試験結果・合格基準・参考2
合格後の流れ:付記申請で特定社労士に
合格後は、合格を証する書類を添えた付記申請書を所属の社会保険労務士会経由で連合会に提出します。名簿に付記されると特定社労士証票が交付され、初めて代理業務を担えます。
付記申請書には、氏名のほか個人番号と登録番号を記載し、写真を添付します。合格を証する書類を添えて、所属の社会保険労務士会を経由して連合会に提出します。
連合会が名簿に付記すると、特定社労士である旨の証票が交付されます。これまでの社会保険労務士証票は速やかに返還します。付記は官報でも公告されます。
活動の場としては、社労士会が設置する労働紛争解決センター(一部を除く)があり、特定社労士が職場のトラブルの当事者双方の言い分を聴きながら和解案を提案する機関として位置づけられています。他の試験の学習ガイド一覧もあわせてご覧ください。
出典: 厚生労働省|第22回紛争解決手続代理業務試験の実施について — 実施要項(令和8年9月11日公示); 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号) — 第2条、第13条の3、第14条の11の2、第20条、第22条、第25条の9; 社会保険労務士法施行規則(昭和43年厚生省・労働省令第1号) — 第9条の3〜第9条の7、第12条の5、第16条の3; 紛争解決手続代理業務|社労士とは|全国社会保険労務士会連合会 — ADRと特定社労士・社労士会労働紛争解決センター
出典
事実確認:
